言わずと知れた日本最高峰。7月の山開きから9月上旬の閉山まで国内外から30万人近い登山者が押し寄せ、いまや夏の風物詩となっている。オーバーユースが懸念されることから、自然保護と安全対策をおもな目的とした富士山保全協力金徴収(任意)の本格的導入が2014年にスタートした。登山コースは4本で、短い順に富士宮口ルート(静岡側)、吉田口ルート(山梨側)、砂走りルート、御殿場ルート(いずれも静岡側)となる。吉田口と富士宮口の人気が高く混雑は必至だ。夏でも朝の山頂付近は冬の気温となるので、防寒・防風着には気を配りたい。高山病対策も不可欠。寝不足は避け、ゆっくり登って水分をたっぷりと。それでも頭痛やめまいが激しければ登山はあきらめ、500m以上高度を下げるといい。なお、弾丸登山(夕方にスタートする日帰り登山)は避けたいところだ。
山梨県南アルプス市の西部にそびえ、高山にしては珍しく県境・市境上に位置しない。北岳一帯はかつて白峰、白根、白嶺などと呼ばれ、古今和歌集にも白嶺の名で登場している。いまも北岳とその南に連なる間ノ岳、農鳥岳は白峰三山(しらねさんざん)の名で親しまれている。北岳登山の起点は山頂北東の広河原。路線バスまたは乗合タクシーでのみアプローチが可能だ。8月まで雪渓の残る大樺沢か白根御池を経て山頂へ至る。花の最盛期は7月上~下旬だが、この時期の週末は山頂北面と南面の2軒の山小屋が大混雑するので、可能なら平日の登山がおすすめ。通常、北岳は1泊2日の行程となるが、間ノ岳と農鳥岳を含めた白峰三山の縦走には2泊3日が必要で、レベルも一段上がる。
山梨県と静岡県にまたがり、日本で3番目に高い山。知名度こそやや低いものの、北岳から農鳥岳へと続く白峰(しらね)三山の真ん中に位置し、巨体揃いの南アルプスの山々のなかでもトップクラスの大きさを誇る。山麓から直接登る登山道がないために、白峰三山の縦走中に立ち寄る山として捉えられているが、もしこの山が独立峰として存在していたなら、北岳にもひけをとらない南アルプスを代表する山のひとつとなっていたことだろう。大パノラマの山頂は広々とし、濃霧が出ているときは農鳥岳方面と、塩見岳に続く稜線上にある三峰岳方面への道とを間違える危険もあるので注意が必要だ。なお間ノ岳山頂へは北岳山荘から約2時間、山頂から農鳥小屋へは約1時間見ておくといい。
南アルプス最北の3000m峰。長野県と山梨県の県境にある北沢峠を挟んで甲斐駒ヶ岳と対峙するが、男性的な甲斐駒ヶ岳とは対称的になだらかな姿を見せ、「南アルプスの女王」とも称される。その全容を望むには、長野県の伊那谷側からでないと難しい。南アルプスでは北岳とともに花の名山として知られ、山頂南部の大仙丈カール(圏谷)、小仙丈ヶ岳南西部の小仙丈カール、山頂北部の藪沢カール周辺は7月上旬~中旬にかけて、みごとなお花畑が広がる。ただし、7月中旬前後まで藪沢周辺は残雪が多いので、雪上歩行に慣れていない人はこの時期、北沢峠~小仙丈ヶ岳~仙丈ヶ岳の尾根コースを往復するといい。また、日程と体力に余裕があれば甲斐駒ヶ岳往復を組み込んでも楽しいだろう。